バイデン副大統領が離日し、中国に向かった。
米国は、日本の同盟国であると同時に、日中の
調整者の役割を担いたいという意図が、今回の
極東の訪問の目的だろう。





日本はこの機会を捉えて、中共と交渉すべきだ。
防空識別圏」に関しては、恐らく、米国は
「折衷案」を習に説明するだろう。日本と
中国の「識別圏」が重ならない様に、韓国と
中国の「識別圏」が重ならない様にする案だ。
問題は、中共が「折衷案」を呑むかどうか、だ。






フィナンシャル・タイムズに、中共は西太平洋の
権益に関して、米国に遠慮せず権益を求める
決定を既に中央共産党内で決定した、という
ニュースがあった。
実際、中共は2006年頃から、海洋覇権、
東シナ海南シナ海の核心利益、海洋国家と
いう綱領を策定しており、今回の「防空識別圏設定」
は、その一連の流れに沿ったもので、計画性の
あるものだ。




以前からこの日記にも書いてるが、中共は、
段階的に、第1列島線(沖縄諸島〜台湾〜
フィリピン西岸)を突破し、第2列島線
小笠原諸島〜グアム・マリアナ諸島)をも
突破して、ハワイ西方沖まで自由に海軍や
船舶航行を運用すると、綱領に謳っている。





中共の海洋拡張主義・覇権主義が邪悪なものか
否かは、脇に置いて議論するなら、一旦
綱領に明記した段階で中共はそれに縛られ、
変更は不可能なのだ。中央幹部は共産主義で、
修正は、失脚(死)を意味するからだ。





日本側の観点で言えば、尖閣諸島が非武装化
地帯になり、日本の領海・経済水域が保全
れれば、中国の太平洋進出に不安があっても
ロジカルには納得できるだろう。
しかし、前民主党政権下の2009年ころから
中国漁船の尖閣侵犯など、国民に嫌中感情が
蔓延し、政治家も中国に妥協できないところまで
来ている。





大切なのは、外務官僚が策定した方針を具現化
するのは、あくまで政治家だ。官僚はあくまで
政策やケーススタディを政治家に示すだけだ。




中共人民解放軍主戦派は、いつでも日本に
開戦し日本を屈服させられると豪語している。
この挑発に、日本の右翼が呼応し、マスコミや
ネット、言論界でも、嫌中感情が蔓延している。





「正義」を主張するのは結構だが、それだけ
では政治家の仕事の貫徹しているとは言えない。





「妥協案」を模索し、長期的な海洋の展望を、
中共を議論の場に引っ張り出して、「多国間交渉」
の枠組みを作ることだ。





ぶっちゃけて言えば、中共が第1列島線を突破
した場合、中共を第1列島線と第2列島線の
間に止め様とする米国・豪州の戦略に乗らない

事が必要だ。
また、ぶっちゃけて言えば(笑)、中共
第1列島線を突破したら、第2列島線も突破させ、
太平洋の奥深く、ハワイ西方沖まで誘導する必要
がある。
日本の海洋覇権を守れなかった代償を支払わせるのだ。
ここまで、想定外のシナリオを官僚は考えて、
政治家は実践できる下地を作っておかねばならない。
だから、嫌中・嫌韓だけでは、米豪に「梯子を
外される」し、対米の外交カードをみすみす
どぶに捨てる愚だけは、やってはならない。





安倍さんは、前世紀、レーガンサッチャー
政治手法に固執し過ぎる。
日本は地政学的に、非常に幸運な場所に位置して
いる。スイスやシンガポールの様になれば、
大きな利益を得られるのだ。しばらくは、
米国の代理で中共と対峙して、軍事力を向上
せざるを得ないが、5年10年20年のスパン
で考えれば、大陸と対峙するだけで、日本の
安全保障が守れるかは疑問である。





中国は、2030年代前半までは5%以上の
高成長が続くという予測が出ている。そして、
一人当たりのGDPが2万ドル以上になった時点
で、成長が止まるという予測が、中共内部の
報告書に書かれたらしい。泣いても笑っても
あと20年。その20年をアメリカの犬に
なって、中共を封じ込めるだけで、日本に
未来があるかどうかは、誰もわからない。





2030年代には大陸の経済拡張は終焉する。
その時、大陸が今の様な状態であるかは、
誰もわからない。
大陸のどんな政治変化にも対応できるように、
政治家は官僚に、さまざまなストーリーを
検討させておくことだ。





硬軟とりまぜた、高次元の政治をやってもらい
たい。
2世3世の日本の政治家にはあまり期待できない
のですが(笑)





中共との交渉で決断するのは官僚ではない。
政治家が最終決断することを忘れてはならない。