福一の故吉田所長の調書は、それ自体検討するに
値するものだが、原発事故当時の東電の対応の
不備を、全て、この調書で説明し結論づけるのは、
国民の目を騙すようなものだろう。
当時の民主党政権と東電とのやりとりばかりに
光を当てても、今回の大惨事の反省材料には
ならない。



時系列で検討すべきは、
(1)原発事故前
(2)原発事故最中
(3)原発事故後
の、東電ならびに国・地方行政の問題点だ。




(1)事故前


1、まず、GEの原子炉の脆弱性を知っていながら、
  福一にGEの原子炉を導入した東電のミス。

2、原発事故前から、しょっちゅう不備があり、
  稼働を停止したりしながらも、抜本的な
  対策をしなかった東電のミス。行政側(国や
  自治体)も、不備を真面目に追及しなかった事。

3、もちろん津波で、電源がアウトになると国会で
  問題提起されたにもかかわらず無視した東電・
  行政のミスもあるが、実は炉心は地震で既に
  メルトダウンしていたのである。これは、炉心
  設計上のミスなのだ。



(2)事故最中

  水素爆発が予想されたものの、建屋の圧力を
  抜かなかった東電のミス(第一原発で水素爆発
  を免れた他の原発は、作業員が建屋にドリルで
  穴をあけて、圧力を抜いて爆発を免れている)。
  またアメリカがホウ素を混ぜよと、忠告しても
  動かなかった東電のミス。
  冷却する前に、建屋の圧を抜くべきだった。
  もちろん限定的に放射性物質は拡散するが、今
  みたいに、東日本一円にまき散らされることは
  なかっただろう。電源にばかり気をとられて、
  本来すべき事(といっても、作業員にとっては
  決死の作業・生死にかかわる仕事になるが)を
  やってなかった。


(3)事故後

   ここでは、ヨード剤の配布や服用をためらった
   国と自治体に、大きな責任がある。一旦起こって
   しまった大事故を、過小に見積もった当時の
   民主党政権の犯罪的な行政は、万死に値する。
   ここでは日本人特有の大本営発表的体質が露呈
   したのである。起こってしまったことを、特別
   大きな問題でないと、国と行政が誘導した。国民
   のパニックを恐れて、である。チェルノブイリ
   原発事故では、あのソ連でさえ、周辺住民に
   ヨード剤を配布・服用させていたのに、何も
   政府主導でしなかった。事故最中の不手際同様、
   犯罪行為に近いと思う。



以上、こんな感じである。故吉田所長の言動を調査
しても、本質的な問題は解決しない。


大問題なのは、日本は、国でも会社組織でも、本当の
てっぺん、つまりトップのトップの能力が劣る。
故吉田所長は、トップのトップではない。東電の
トップに逆らって、事故当時、行動した形跡はない。
そこが、アメリカのスリーマイル原発事故と福島の
原発事故の差になったのだ。間違えば、スリーマイル
島の原発事故は、福島級の事故だったが、トップの
トップが優秀だったので、機転を利かせて大惨事を
免れた。NHKテレビのアーカイブで、スリーマイル島
原発事故を放送していたが(確か1980年代制作だが)、
東電には、その映像など全く生かされていなかった、
という事だ。




原子爆弾は、広島と長崎に落ちて大惨禍を被り、そして
今度は福島。
我々、日本人ほど、こんな過ちを繰り返す人種は
いない。我々自身、真摯に反省すべきだろう。